木のいのち木のこころを読む
倒壊の記録ない五重塔、模型使い耐震性のナゾ解明へYOMIURI ON-LINE / サイエンス(12/13)
1300年以上にわたり地震で倒れた記録がないとされる五重塔の耐震性の謎に迫ろうと、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)は13日、五重塔の5分の1模型を使った本格的な耐震実験を始めた。
この記事を見て思い出したのが、この本でした。
1995年に亡くなられた薬師寺宮大工棟梁の西岡常一さんの「木のいのち木のこころ-天」、お弟子さんお小川三夫さんの「木のこころ木のいのち-地」です。
西岡さんは木に対して深い洞察を持ち、木の持つ本来の命・生命力を生かす名匠として名高かった方です。
そんなことしたらヒノキが泣きよります・・・。 これは斑鳩の宮大工・西岡常一氏の言葉です。西岡氏は、法隆寺の宮大工で奈良薬師寺の西塔や法隆寺の三重の塔の再建なども手がけ、近代建築工学の立場で設計されたその建築学者たちの万全の設計図と施工計画に対して、宮大工の経験とカンと心情とでその工法に反対し、たとえ討ち首になってもテコでも動くまいとする工匠(たくみ)の思いをつらぬき通して、数々の塔の再建を果たしてきた人です。 わが国最古の木造建築・法隆寺、つまりそれは、とりもなおさず世界一美しい最古の現存建築物という事になります。塔組みをいかに末永く一千年という時間に耐えさせるか、木の心を知りそれを生かす事、現代にその伝統を受け継ぎ、つぎの世代に引き継ぐために、西岡さんは木のいのちを自分のいのちとし自らの掌に孔をあけられるのを拒むように、木の補強のために鉄骨を通す穴をヒノキの部材にあけることを拒否しつづけてきた人なのです。 鉄のサビが木をだめにし、木を殺してしまうからです。その情熱、それは一宮大工の思いというより日本人の心ともいうべき、木の文化に対する強い使命感によるものだと私は思うのです。西岡さんは木の心という本の中で、「ヒノキにはヒノキのいのちがある、鉄よりもコンクリートよりも、永いいのちがありますのや・・・。」と言っています。 |
僕は古い民家の囲炉裏のすすデ真っ黒になった太い梁を見るのが大好きです。
加工されず原木のまま佇むその太い梁、その力強さに惹かれます。
木が好きで建築が好きで今この仕事をしています。
建物を造る作業の喜び、しばらく忘れていた自分のこの仕事への情熱を今あらためて思い出しています。
ここのところ流れ作業的になっていた仕事への取り組む気持ちを戒めてもいます。
西岡氏の言葉のなかで
「揃えてしまうということは、きれいかも知れませんが、無理を強いることですな。
木には強いのも弱いのもあります。
それをみんな同じように考えている。
昔の人は木の強いやつ、弱いやつをちゃんと考えて、それによって形を変え、使う場所を考えていたんです。」
と言う一文が好きです。
木についての言葉ですが、このことは「木」を「人」に置き換えても十分通用するのではないかと思っています。
人それぞれの個性を上手くあわせればより強固な会社なり社会が出来るのではないか、
人が単一化と言う枠にはめられてどんどん没個性化させられる、規格から外れると使われない、そんな有り様に疑問を抱いています。
宮大工棟梁「西岡常一の世界」法隆寺iセンターにて開催
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