記憶
色々な事をよく覚えているのは
時として良いようで良くないと思える時が有る。
去年の6月の手帳を見ると、空きのスペースが無いくらいに沢山の文字が並んでいる。
妻の日々の様子、
病状の進行具合、
運動会や自宅看護などの関係者の連絡先、
ちょっとした会話の内容・・・・
殴り書きされた言葉一つにいろいろな前後の事が思い出される。
子育ての真っ最中で共に父・母として生きて居たけれど、あの一ヶ月は出会った頃の恋人時代の様な関係に戻って居たと思う。
沢山もらったハズの笑顔の中で一番印象に残っている笑顔は丁度この頃の笑顔だ。
ベッドの上にちょこんと座り、「また明日ね」の言葉に「うん」と言いながら返してくれたあの満面の笑顔だ。
「笑顔が素敵な人だった、そしていつも笑顔だった」
本当は沢山怒り、沢山泣いて居たのに笑顔だけが残った。
病院から帰る時、僕はチューをした。
うへっと最初は今更みたいな事を言っていたけど、キスの後はいい笑顔になった。
そんな思い出はとてもとてもいい思い出だけど、時として深い深い傷になる。
思い出が美化されて行くのは正直怖い。
美化された分それは凶器と成って胸をえぐる。
辛いが故に
へらへら
笑って候う。
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