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2012.05.15

最後の晩餐

懸命に思い出そうとしているのに、どうにも思い出せない事が有る。

昨年最後の家族旅行から帰ると、妻はどんどん食べられなくなり始めた。
腫れ上がった肝臓のせいでリンパ節が圧迫され、リンパの流れが止まり小腸が機能しないため、食べる事もままならない状態と担当の医師から説明を受けた。
食べたくても体が受け付けてくれないのである。
食いしん坊な人だった、体重が倍の僕と同等もしくは僕以上に食べた。
美味しい物には目がなかった。
そんな彼女が食べられないってことは人生の楽しみの半分を無くしたような事だったろう。

自分が食べられなくても妻は入院する5月20日まで、僕と娘の為に料理を作り続けてくれた。
体調が辛い時は代わりに僕が作ったりもしていたが、自分の持っているレパートリーを惜しみなく出していてくれたと思う。

思い出したくても思い出せないと言うのが、妻が最後に作ってくれた料理がなんだったかと言う事。
葬儀が終わって娘に「ママが最後に作ってくれた料理は何だった?」と聞いたのだが、娘の記憶も曖昧ではっきり覚えて居なかった。
ふとしたときに思い出そうとするのだけど、未だに思い出せない。
なんだったんだろう。
優しい味がしたんだよな、きっと。
根菜の煮物だっただろうか。
ハッシュドビーフだったろうか。
クリームシチューだったろうか。
カレーだったろうか。
麺類と肉料理・魚料理、中華風の炒め物は僕の担当だった。
煮物系だと思うのだけれど、
いつか思い出す事があるのだろうか。

覚えていない自分が悲しい。
あんたらしいはと言っているのかな。

システム手帳のカレンダーは毎年新しい年の始まりに昨年のは捨てていたのだけれど、
妻が発症した2008年以降のカレンダーはずっと残されたままだ。

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