湯川の小さい秋
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「もう今日は釣りをしないのか。」
「ああ、10時間以上やったからもう十分満足だ。」
「釣れていないじゃないか。」
「今日は完敗です。」
「かれこれ1時間以上もそこに座っているが、」
「ある人の事を考えていたんだ。」
「大切な人か?」
「うん、大切だった人だ。」
「ここでの思い出は有るのか?」
「いや、川に来るといつも別行動だったよ。」
「そうか。」
「ただこの奥日光と日光には、楽しかった思い出がいっぱい詰まって居るよ。」
「どんなだ。」
「初めてのドライブは金精峠の紅葉だった、あの時は確か信号で止まったら毎回キスをしながら来たんだよ。
菖蒲が浜での初めてのキャンプ、湯滝レストの焼きまんじゅう、金谷ホテル、フランス料理のシェ・星野、浅いの串かつ、去年の草紅葉、オルゴール館、湯滝・竜頭の滝・華厳の滝・清滝・霧降の滝、東照宮も歩いたな。
夕日の中で引いたキャンプ場のリヤカー、荷物満載なのにちゃっかり後ろに乗っていたんだぜ。
朝焼けの中毛布にくるまりながら飲んだモーニングコーヒー、5℃の寒さだったなぁ。
川俣に行ってはここに寄り、湯西に行っちゃここに寄っていたさ。
昔はキャンプ場で釣りも出来たんだよ。ゆばが食べたいと店を探したんだけど、あんまり美味しくなかったな。
思い出し始めるとキリがないね。」
「いい思い出だな。」
「ああ、かけがいのない思い出だ。」
「泣いているのか?」
「ちょっとだけね。」
「陽が沈みきってしまうまでには、まだ時間が有る。ゆっくりしていけばいい。」
「ありがとう、気の済むまで居させてもらうよ。
ところでどうなんだい、二つも台風が来て、かなりズタズタになっているようだけど。」
「今年はちょっと堪えたな。」
「かなりの大きな木も倒れていたぜ。」
「形有るものはいつかは倒れそして朽ちる、早いか遅いかの違いだ。
彼らは倒れたが、無駄に倒れた訳じゃない。朽ちれば川の栄養にもなるだろう。
川に刺さった枝や幹は、サカナたちのいい隠れ場所になるだろう。
大きな木が倒れれば、陽の当たりが良くなって、今まで陽に当たらなかった小さな木にも陽が差し込む事だろう。
小さな木に自立を促すのさ。
だから決して無駄に倒れた訳じゃない。
きっと何かを遺してくれている筈だ。
お前の大切だった人だってお前に何かを遺してくれている筈さ、今すぐ形にはならないだろうが、何年かすれば分かるさ。」
「そうだね、そうだと思う。」
「あなたは大丈夫かい?。」
「なーにこれしきりの事。悠久の時代から大水が出ようともその度にわたしは再生してきた。
大なり小なり形は変わって来たが、その度に蘇生し再生してきた。
わたしにはその力が有る。」
「その力って何だい?。」
「自分の中に有る『治癒力』さ。幸いにも人間の力で姿も形も弄られて居ないんでね、わたしは自身で立ち上がり蘇生し再生出来るのさ。
人間の手が加えられると、崩れだすともろい。
さらに崩れて収拾が付かない状態になる。
人の力で再生しても自分で起きなけりゃ何の意味もない。支えが失くなればまた倒れるだろう。」
「確かにそうだね。」
「お前だってそうだろう、自分で起き上がらなければ、誰も力は貸してはくれない。
寝たままの魂を起こし上げるには他人からすれば、大変な労力だ。
誰かに癒してもらったって、誰かに慰めてもらったって、お前が立ち直った訳じゃない。
傷んだ心は自分で直さなければ前に進めないだろう。」
「再生か・・・・。」
「そうだ再生だ。わたしはこれからの秋と長い冬の間に、傷んだ体を癒やしきっと再生し、来年の遅い春を迎えるだろう。そしたらまた来るといい。お前の好きなポイントにお前でも釣れそうなブルックを2~3匹用意して待って居るよ。」
「分かったよ、お互いに再生してまた会おう。」
「約束だ。」
「ありがとう、元気を分けて貰った気がするよ。」
川は教えてくれる。
ゆるゆるとした流れは心を癒やしてもくれる。
ちょっと疲れた釣り人にも安らぎと元気をくれる。
湯川のシーズンは終わった。
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富士山が見たくなった。
富士山ってなんとなく元気を貰えますね。
と言うことで、今年最後の忍野へ。
情報では水量も多く釣りになるかどうかと言うことでしたが、川面に立つだけでもいいんで向かいました。
仮眠のつもりで寝ましたが、ものの見事に爆睡。
起きたのは朝の九時。
仕方が無いので洗濯やら片付けやらして11時に出発。
御殿場ICまでは順調でしたが、ICの出口で渋滞。
さらにはR-138もほとんど動かずの大渋滞。
天気も良かったので、富士山は堪能出来ましたが・・・・。
渋滞の列の中、そう言えば嫁さんは釣りが嫌いだったなと思い起こす。
一緒に出来ればと思って結婚前に管理釣り場に行って、釣ることに夢中になりすぎて風邪をこじらせて気管支炎になっちゃったのもひとつの原因。
それ以上に、いつも家族はみんな一緒という彼女の想いが強くて、僕一人が釣りに行ってしまうのが嫌やだったんだなと、ようやく気付いた。
今となっては仕方ないことだな。
などと考えるに十分な渋滞で、ようやく2時過ぎに富士急跡に立てました。
富士急跡に着いたら富士山が見えなくなっちゃいましたが。
富士急跡では想像していた通りの激しい流れ。
瀬がごんごんという感じ。
ただ不思議とこの瀬の中から鱒が引っ張りだせたら面白いだろうなと思えた。
裏一が空いていたので、すかさず入ります。
笹濁りで流れも強いので、初めはマラブー引き。
20cmちょいのレインボーが釣れました。同じ位のが3匹ほど続く。
水量が多いので裏一の前もいい流れになっていて、一番の瀬とぶつかり合って、ちょうど川の中央にたるみが出来ていました。
リバーエッジの渡辺さんが対岸から、「中央でもたまにライズしていたよ。」と声が掛かる。
それならば、中央のたるみでドライフライで締めたくなります。
フライをコンパラダンに変えて数投、同じくらいのレインボー。
しばらくすると、わずかにライズらしきものが見えた。
上空では大き目のカゲロウが上下運動。
こいつはおもしろい。
カゲロウのDDフライに付け替えて、たるみにキャスト。
パショっと出て来たレインボー、大体37cmくらい。
今シーズン最後の忍野、納得して終われました。
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実に2年2ヶ月ぶりの湯川の中流域でした。
赤沼茶屋に着いたのが5時半。
6時前に茶屋が開いたので、釣券購入。
男体山が明るくなり、いい一日になりそうです。
赤沼茶屋の親父さんが今年はバッジが余りそうだからと、アンケート用紙出さなくても早々にバッジをくれました。
同じように6時前にいた釣り人数名は、釣券購入と同時に湯滝へと消えて行きます。
のんびり支度して6時半に赤沼からエントリーしますが、僕が最初の人でした。
釣れても釣れなくても今日は中流域と心に決め、木道を歩きます。
戦場ガ原に出来た池は消えていたけど、いたる所で増水の跡が有る。
ただでさえ50cmは高いかなと思うのですが、その1m以上上にまで増水した跡が有りました。
歩きながら川を凝視しても魚っ気無いです。
久しぶりのテラスと思いましたが、谷地坊主の所も川になってました。
テラスの下流のお気に入りポイントへ行こうとしましたが、股したまで潜る。
釣り人に会わないでいるのに、ここで嵌ると助けも呼べなさそうなので諦めます。
青木橋上流。
対岸は立てるところがない。
ストレートにも行けない。
青木橋の下流でウグイっぽいのが一回フライに出たけど、それっきり。
藪漕ぎの途中でなんか滑るなと思ったら、シューズのフェルトが両方とも剥がれているし。
多分リバークリーンでも見つからないような所にゴミだしちゃいました、すいません。
コカゲの姿は有りません。
虫の気配なし。
テリトリアルもいなさそう。
ライズ無いです。
赤沼までとぼとぼ歩きます。
ブルックの姿は、戦場ヶ原からの排水路に入り込んでいる一匹だけ確認。
平成19年台風第9号の後では、ちびブルックが釣れて湯川は大丈夫だと思ったけど・・。
今回はどうなんでしょ。
さらに赤沼の下流へと言ってみましたが、???です。
朝の決意はとうに消え、
せめての一匹を目指して湯滝駐車場に。
湯滝下でスーザンさんとkajiさんに会い、声の大きい方にも遭遇。
挨拶もそこそこにして釣り開始。
ゴンゴンの流れ、フェルト無しのブーツだと油断するとそのまま流されそうな感じ。
もう既にいじめられている後なので反応無し。
二人と合流して湯滝、
そこでkajiさんからフライをもらって、滝下のたるみを一つ一つ探れば一匹くらいはまだ出ますよとのこと。
観瀑台からの小学生の質問責めやら対岸からの石投げにもめげず、ようやく一匹。
坊主だけは逃れました。
帰りに浅井さんのメンチカツ。
8/20に娘と二人で珍しく湯川に来ています。
3年前の7月に家族3人で来て、僕は釣り。
二人は散策道を歩きました。
そんな思い出に浸ってみました。
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JUJUの4thアルバム「YOU」。
時期もちょうど重なったことも有って、僕の心の癒しのアルバムになった。
通勤の車の中で泣きたいときにかけるBGMにはもってこいだ。
「また明日」はTVドラマが好きだった妻と一緒に最後に見た「グッドライフ」の曲だった。
たぶん自分の置かれた状況に重ね合わせて見ていたんだと思う。
「ANTIQUE」は心を癒してくれる。
好きも嫌いもすべて含めてそれは一緒に生きた証だと。
中でも
「You still livining in my memories」
君は僕の思い出の中に今だいる(今も生きている)には、思いっきり刺さった。
家族で見た劇団四季の「ドリーミング」。
思い出の国では亡くなった人に会いたくなったら思い出してあげればいつでも会えるんだよという先に無くなった人からのメッセージ。
「思い出してくれればそれがご馳走なんだよ」と亡くなったおばあさんは別れ際にチルチルミチルに伝える。
悲しんでばかりいないで、楽しかったことを思い出して、「あの時こうだったねとか、あの紅葉には感動したよねとか、あのときの君は・・・」色々思い出して心の中で話し掛けてあげよう。
心を暖かくすればメセージもきっと届くことだろう。
妻の魂を引き止めるのではなく、成仏できるよう精一杯送り出そう。
娘と二人、仲良く幸せに暮らしているよと、妻を安心させてあげよう。
妻が亡くなってすぐのこと、
タンスの中にしまい放しのピンクのトランクスが出てきた。
結婚式前のバレンタインディにもらったもので、そこには初めて袖を通したウェディングドレスの試着で若干緊張した面持ちの彼女の写真と
「しあわせにしてね リカ」という文字がプリントされている。
それを握りしめしばし泣いた。
洒落のつもりでそのときは軽く貰ったけど、今になってこの言葉は重かった。
こたえた。
「幸せってなんだ」
「君は幸せだったのかい」
問うても答えが貰えない、答えてくれる相手がいない迷宮に僕は入り込んだ。
47歳と言う若さで亡くなったら、どう考えたって幸せじゃない。
思い残したこともきっといっぱい有る。
でも命の長さ=幸せではないだろう、比べる尺度が違う。
しかしこれが神が定めた運命と彼女は受け止めた。
懸命に逃げずに生きた。
再会してから15年のアルバムを改めて見直す。
君は幸せだったかと、問いながら。
再会して結婚するまでの一年間、結婚してから娘が生まれるまでの期間。
素敵な笑顔の写真ばかりだ。
大体の写真が僕に抱きついているような写真だ。
子を授かり娘が生まれたときは幸せに満ちている笑顔だ。
子供が大好きだった彼女は娘の誕生を心から喜んだ。
どんな時も娘に全力投球で接していた。
発病してからも、娘の夢の実現に手を抜くことはなかった。
自分の事はさておき人の為に生きると言っていたけれど、本当にその通りにしていた。
君は幸せを感じていてくれただろうか。
大きな喧嘩も小さなこぜり合いもたしかに有った。
その都度、仲直りをして修正していった。
いつの時代のアルバムも君の満面の笑顔で溢れている。
最後と思って行ったGWの上高地・高山旅行。
やはりそこには君の笑顔がいっぱいだ。
死期を薄々感じていたにも関わらず、たくさんの笑顔を遺してくれた。
本当に不幸な人は笑い顔は出来ないと思う。
君を幸せに出来たんだろうか。
一緒にいる事に幸せを感じてくれていたんだろうか。
答えのもらえない問いかけを続けていた。
回答者がいない問題ほど虛しいものはない。
娘にも聞いてみたが、
ママの答えはわからないけど、私はママの娘で幸せだったと言う。
それなら僕だって同じ答えさ。
リカが僕の奥さんでこうして15年一緒に過ごせた事はとても幸せな事だよと。
僕はこう思う事にした。
僕自身はとても幸せだった。
君と過ごせた15年はとても温かく、充実したものだった。
時にぶつかり合い、喧嘩して仲直りし、励ましあい、慰めあい、愛し合い、笑いあい、
悲しみ合い、傷つけあい、ともに生きた。
喜び合い、感動しあい、助け合い、ともに暮らした。
最後に入院してから、僕と妻は父でもなく母でもなく、恋人同士のような時間を過ごせた。
一日中ベッドの上で夜になって会いに来る男を君は首を長くして待っていてくれた。
30分しか居られないのを君は引き止めて、面会時間を一時間も過ぎてしまったりもした。
僕は君と生きてこれてとても幸せだった。
幸せなんてパートナーの片割れだけが感じるものではないよね。
だから
君も幸せだった。
少しは幸せを感じてくれたと思うことにした。
「何言ってんのよ、思い上がるにも程が有る」と言うかも知れない。
いつでも抗議を受け付けているので、僕の枕元にお立ちください。
お待ちしています。
♫月日は巡る
光のように
瞬きをする間に
景色も変わる
映画のように
瞬きをする間に
瞬きをする間に・・・
瞬きをする間に・・・
JUJU/「ANTIQUE」より
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早いもので妻が亡くなって2ヶ月が経った。
まだ遺品の整理は出来ていないけど、
彼女のマガジンラックを整理した。
そこには何枚かの絵はがきが挟んで有った。
澤田直見さんの「うさぎとかめ」のシリーズ。僕も好きでその時の気持ちを代弁してくれて居そうな文句が在る物を選んで、バースディカードの代わりにしていた。
一枚一枚の文面を見ると、彼女の苦悩や伝えたいメッセージがそこには有った。
枚数からしてもまだまだ頑張って生きようとしていたんだと思う。
最近になって最期に言ってくれた「ありがとう」は
文字にすると
ありがと
だったと思えるように
なってきました。
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