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2004/08/17

丹沢水無川本谷の苦い思い出


丹沢水無川本谷F6
昨年札掛の丹沢ホーム国民宿舎で丹沢だより401 2003.10と言うのを見ていて水無川本谷大滝の記事を目にしました。
「本谷の大滝・F8(25m)は平成13年頃から上半部が大崩壊し、荒々しい露岩の中央を水流が3段なって落ちている。---一部抜粋」
14年前の苦い思い出が昨日のことのように思い出されます。
単独で11月の頭にこの川の沢行に行きました。難なくここまで来て直登を避け右のまき道へ。
岩棚に移ることが出来ず、上へ上へと行く羽目になりたどり着いたのは尾根道に程遠い小山の上。
下降する路を探して降りていくと熊笹の藪の中に道らしき穴、入っていくと急坂となりはいずり落ちるようなトンネル、獣道と気付いた時にはもう下るしか選択肢がない。
スポッと抜け落ちたら傾斜50度を越える大崩壊地、止まると転げそうなので下まで駆け抜けました、一緒に石ころが走ってきます。
ようやく川筋にたどり着くと目の下には先ほどのF8。
これ以上は無理と思い右岸の尾根道に一気に上がろうと草付きに捉まりながら上へと行きます。
尾根道5Mのところできが緩んだのか不用意に掴んだブッシュがスッポ抜けました。
滑り落ちます、体を反転させ20mくらいのところで目前に大木。
右足で受けようとしましたが着地できず左足のむこうずねで木に激突。
気を失わんばかりの激痛、「折れたか」と体動かせず、しばらく木に張り付いていました。
しばらくして左足を動かして見ると動きます、折れてはいないようです。
遠くに山小屋の煮炊きの煙が見えます。しかし太陽は無情にも山の陰に隠れて行きます。
ここでザックから取り出したのが沢登り入門/吉川栄一著で、シットハーネスと8環の使い方を初めて見ます。
(前日秀山荘でザイルとともに購入)
生まれて初めて垂直下降で20mのザイルをダブルにして下ります。
途中振り子状態で5~6m脇の木にトラバースすること3回、最後は片足引っ掛けて木にしがみつきました。
最後の下降で地表まで3m足りず飛び降ります。(これが一番怖かった)
たどり着いたのはF8の右岸、何時間もあがいて左岸から右岸に渡っただけのことでした。
ビバークも考えましたが翌日台風がやってきます。
登った滝をいくつも下り、側道に逃れます。
ここでヘッドランプの電池切れ、暗闇のなか足先で道を確認しながら森の中の路を歩きます。
フラフラになって停車場に着いたのは夜10時半、朝6時からの歩きは延々16時間半。
翌日台風の中朝8時よりラグビーの試合、午後から同じ仲間の結婚式・4次会まで出て家に帰ったのがAM2時。
その翌日から一週間寝込み、最初の3日間は奥歯ががたがた震えかみ合わせも出来ない状態でした。
吉川栄一著書

沢登りを一言で表現すると・・・、五目チャーハンだ!もっと正確に表現すると、その昔、山岳部の合宿で喰わされたヤミナベだ!残菜のごった煮なんだが、ローソクを消して一人一品何か食い物を入れて、ふたをして煮るのだが・・・。行動食のクラッカーのカスや梅干の種はまだ善良なほうで、ハーケンが入っていたり、わらじが煮えてたりするんだ。沢登りはヤミナベとほとんど同じ遊びなのではなかろうか?
山、谷、森、風、雲、水、土、とにかくいろんな要素と、人間の目的、そして私たち一人一人の感性がゴチャゴチャになって、ある種の化学反応のようなことを起こす。そこで発生した得たいの知れない気体が、「沢登り」なのかもしれない。この反応は、一度として同じ反応ではなく、同じ気体は発生しないのだ。この気体は、まっこと得もいわれぬ芳香を放つこともあるし、屁みたいな時もある。芳香を放つ遡行は、人間の側の遡行目的と、山や谷、風が握手した時に発生する。この香りに酩酊する遊びが、「沢登り」なのである。一度、この芳香を嗅いでしまうと、たいてい中毒になり、アルパインクライミングなどには特効がある就職、結婚、出産といった解毒剤の効果も弱い。症状の重い病的酩酊者は自らを「沢屋」と称す。

「吉川栄一著・沢登り」より
この一連の行動をイラストにして動画風にしようとしているのですがなかなか出来上がりません。
若くも無い時代の無謀な沢行、 帰ってこれてよかったとレポ作成で改めて思いました。

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